ただ、養育費をどのくらいの金額に定めれば良いかわからないということもあるでしょうし、将来の不払いが心配というご相談も多くお受けします。
また、離婚後、事情が変わったために養育費の金額を決め直したいという希望を持たれる方もおられます。
そこで今回は、子どもの養育費にまつわる知識を中心に、山口の弁護士が解説します。
1.養育費とは
養育費とは、子どもを養育監護していない親が負担する、子どものための費用のことです。
離婚すると、親権者や監護者とならなかった方の親は、子どもを実際に養育監護することは(面会交流を除き)ありません。
しかし、子どもとの親子関係はなくならないので、子どもの養育に対する責任が残ります。
そこで、親として、子どもの養育費を負担する必要があります。
養育費が発生するのは、基本的に子どもが成人するまでの間ですが、支払期間については、当事者の話し合いにより、別途定めることも可能です。
2.養育費の金額の相場について
離婚時に養育費を取り決めるとき、金額的にはどのくらいに設定すれば良いのでしょうか?
養育費は子どものための費用なので、両親がその子のためにどれだけの費用が捻出できるかが前提となります。
つまり、養育費の金額は、当事者(支払いをする側と受ける側)それぞれの収入状況によって、また、それぞれの家庭状況などによって異なります。
通常は、支払いをする側の収入が高ければ養育費の金額は上がりますし、支払いを受ける側の収入が高ければ養育費の金額は下がります。
また、子どもが15歳以上であったり、子どもの人数が多い場合、子どもにかかる費用が多くなるので、養育費の金額が上がります。
養育費の金額を当事者で決めることができない場合には、「養育費算定表」を参考に決めることもあります。
家庭裁判所における離婚調停や訴訟、養育費調停をするときなどにも、この養育費算定表が利用されます。
3.養育費の取り決め方
養育費を取り決めるときには、まずは、協議離婚の際に、夫婦が話し合って決定する方法が基本です。
協議離婚では、養育費や財産分与、慰謝料などについては取り決めをしなくても離婚できますが、後々のトラブルを防止するために、こういったさまざまな離婚条件についてもすべて話し合い、合意書にまとめておきましょう。
夫婦で話し合いをして養育費について合意ができたら「書面」にまとめるべきです。養育費を確実に受け取るためには、「離婚公正証書」にしておきましょう。
もしも夫婦間の話し合いによっては合意ができない場合には、離婚調停をしなければなりません。
離婚調停でもお互いに離婚条件について合意ができないのであれば、離婚訴訟が必要になるケースもあります。
4.養育費が支払われなくなった場合の対処方法
離婚時に養育費を定めても、相手がその後支払いをしなくなることがあります。
その場合、公正証書や調停調書、判決書などの「債務名義」と呼ばれる書面が手元にあるかどうかにより、対応方法が大きく変わってきます。
債務名義とは、相手に対し差押えができる効果を持った書面のことです。具体的には、以下のものが債務名義と認められます。
- 強制執行認諾条項付き公正証書
- 調停調書
- 審判書
- 和解調書
- 判決書
こういった書類が手元にあれば、送達証明書や執行文を取り寄せて、差押えの申し立てをすることにより、相手の預貯金や給料などを差し押さえることができます。
そして、差し押さえた資産から、不払いの養育費を回収できます。
これに対し、債務名義が手元になければ、いったん相手に対し、養育費調停をしなければなりません。
調停が成立したら調停調書が作成されますし、調停が不調になれば審判になって審判書を得ることができます。
このようにして、調停調書や審判書を入手したら、これらを使って相手の資産を差し押さえることができます。
5.離婚後に養育費を請求したい場合
養育費の支払いを受けるためには、離婚時に養育費の取り決めをしておくべきですが、ケースによってはそれができないこともあります。
その場合、離婚後に養育費を請求することも認められます。
そのためには、まずはメールや電話などで、相手に養育費の支払いを求めましょう。
それでも相手が支払いに応じないのであれば、家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てると、調停手続きによって、養育費の取り決めの話合いをすすめていくことができます。
調停で合意ができなかった場合、手続きが当然に「審判」に移ります。
審判になると、裁判所が、ケースに応じた相当な養育費の金額を定めて、相手に対し、支払い命令を出してくれます。
相手が審判に従わない場合には、審判書を使って相手の資産を差し押さえることも可能です。
6.離婚後に養育費を決め直したい場合
最後に、離婚後に養育費を決め直す方法についても、ご説明します。
離婚後、子どもの年齢が上がったり、支払側の収入が上がったり、あるいは支払側の経済状況が大きく変わって支払いができなくなったり、支払側が再婚したり子どもができたりすることがあります。
このように、事情が変わって、今の養育費の金額が妥当ではなくなった場合、養育費の金額の変更ができます。
基本的には、当事者同士で話し合いをして変更できることが望ましいのですが、それができない場合には、家庭裁判所の調停を利用します。
養育費を増額してほしいときには「養育費増額調停」を申し立て、減額してほしいときには「養育費減額調停」を申し立てましょう。
調停や審判、訴訟や差押えなど、法的手続が関連する場面もたくさんあります。
弁護士によるサポートを得た方がいい場面も多いので、養育費の問題にお困りの場合には、一度お気軽に山口の弁護士までご相談ください。