ただし、性格の不一致が原因の場合、必ずしも離婚できるとは限りません。相手がどうしても離婚に応じない場合、最終的に離婚できない可能性もあります。
また離婚できるとしても、不利な条件にならないように慎重に対応を進める必要があります。
今回は、性格の不一致で離婚できるケースとできないケース、離婚を進める際の注意点などについて山口の弁護士が解説していきます。
1.性格の不一致で離婚できるケース
性格の不一致が理由で離婚できるのは、以下のようなケースです。
1つは、相手が離婚に合意して協議離婚できるケースです。
夫婦間に性格の不一致がある場合、夫婦の双方がストレスを感じているものです。
その場合、こちらが相手に離婚意思を伝えると、相手の方も離婚を受け入れる事例があります。
お互いに離婚を希望するなら原因が何であれ協議離婚できるので、役所から離婚届を入手して必要事項を記載して提出すれば、離婚が成立します。
相手と直接話し合いをしても、相手が離婚を受け入れない可能性があります。
離婚そのものについては合意ができても、財産分与や親権などの離婚条件について意見が合わないケースもあるでしょう。
その場合、家庭裁判所で離婚調停を申し立てると離婚できる可能性があります。
調停委員の説得によって相手が離婚に同意するケースもありますし、お互いが離婚条件について譲り合って合意できるケースもあります。
調停で夫婦の意見が合致したら、調停離婚が成立します。
訴訟では、性格の不一致だけで離婚を認めてもらうのが難しくなっています。
ただし、以下のような性格の不一致とは「別の離婚理由」がある場合には、訴訟でも離婚できる可能性があります。
- 夫婦の性格が合わないことから、相手が別の異性と不倫している
- 性格の不一致によるストレスで、相手が暴力を振るう
- 性格が合わないので嫌気がさし、相手が生活費を払ってくれなくなった
- 性格の不一致による不仲が原因で、相手が家出した
- 性格の不一致が原因で長年別居状態が続いている
- 性格が合わないのでお互い離婚したいと思っているが、離婚条件にのみ合意できないので裁判を起こした
2.性格の不一致が原因で離婚できないケース
以下のような場合には性格の不一致を理由に離婚できない可能性があります。
- 相手が離婚を拒絶していて、性格の不一致以外に離婚原因がまったくない
協議で合意できず、調停をしても相手が「絶対離婚しない」と言い続けており、訴訟を起こしても相手の気が変わらない場合です。
特に夫婦が同居しているか、別居して間がないケースでは離婚できない可能性があります。
以上のように、性格の不一致が原因の場合、離婚できるケースとできないケースがあります。
離婚を希望するなら、まずは離婚が認められるケースかそうでないか、正しく見極めなければなりません。
3.性格の不一致は「法律上の離婚原因」にならない
性格の不一致では離婚できないケースがあるのは、性格の不一致は法律上の離婚原因にならないからです。
法律上の離婚原因がないと、訴訟で離婚を認めてもらうことができません。
民法が認める法律上の離婚原因としては、以下のようなものがあります。
- 不貞
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
性格の不一致は①~④に該当しませんし、⑤の婚姻を継続し難い重大な事由にもあてはまりません。
ただし性格の不一致だけではなく、①~④に該当する場合には別の離婚原因が認められるので、離婚訴訟によって離婚できます。
4.性格の不一致では慰謝料を請求できない
性格の不一致を理由に離婚する時、慰謝料を請求できるのでしょうか?
これについては、基本的にできないと考えられます。
離婚の際、慰謝料が発生するのは、相手に「婚姻関係を破綻させたことによる責任」が認められるからです。この責任を「有責性」といい、有責性が認められる配偶者を「有責配偶者」といいます。
お互いの性格が合わない場合、どちらが悪いわけでもありません。どちらにも有責性が認められないので、たとえ離婚が認められても慰謝料は発生しません。
そこで性格の合わない相手と離婚協議や調停で離婚する場合、慰謝料請求はできません。
訴訟で離婚する場合にも、長期間の別居を理由とする場合などには慰謝料が発生しません。
ただし相手が不倫していたり暴力や生活費不払いなどの別の原因があったりする場合には、それらの要因によって相手に有責性が認められるので、慰謝料を請求できます。
5.性格の不一致で離婚する手順
性格の不一致を理由に離婚したい場合、次のような手順で進めていきましょう。
まずは、相手に「離婚したい」という意思を伝えましょう。
相手も離婚に応じるなら、協議離婚できます。
相手が離婚に応じるとしても、いきなり離婚届を提出するのはお勧めしません。
その前に財産分与や養育費などの離婚条件を取り決めましょう。
離婚条件を決めておかないと、離婚後に財産分与請求や養育費請求が起こってトラブルの蒸し返しになる可能性があるためです。
協議離婚する際に取り決めておくべき事項は、以下の通りです。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
自分達だけでどう定めて良いかわからないなら、弁護士までご相談ください。
離婚条件についてお互いに合意ができたら、必ず「協議離婚合意書」を作成して書面化しましょう。このとき、単なる合意書ではなく「離婚公正証書」にして置くことをお勧めします。
公正証書にしておけば、後に相手が養育費などを支払わなくなったときに給料や預貯金などを差し押さえることができるからです。
公正証書を作成したいときには、全国のどこかの公証役場に申込みをして、日取りを合わせて相手と一緒に公証役場に行き、公証人に離婚公正証書を作成してもらいます。
合意書の作成も完了したら、夫婦で離婚届を作成し、役所に提出します。
自分たちで協議をしても意見が一致しない場合には、家庭裁判所で離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てましょう。
調停では、調停委員が間に入って夫婦の意見を調整してくれます。
あなたの離婚意思が固い場合には、調停委員が相手を説得することによって離婚に応じさせることができるケースもあります。
調停でお互いに合意ができたら離婚が成立します。
6.相手がどうしても離婚に応じないなら別居する
夫婦の一方が性格の不一致を理由に離婚したいと思っても、相手がどうしても離婚に応じないケースがあるものです。
その場合、訴訟でも離婚できないので、すぐには離婚を成立させられない可能性があります
どうしても離婚したいなら、別居するという方法があります。
まず、別居が長期間に及ぶと、それ自体が離婚原因として評価されるので訴訟でも離婚が認められやすくなります。
また、別居すると相手も現実を直視せざるを得ないので「離婚も致し方ない」と考えるようになるケースが少なくありません。
さらに、あなたが主婦などで相手に収入があれば、別居後相手に婚姻費用(生活費)を請求できる可能性があります。
婚姻費用の支払いは離婚時まで続くので、相手が「夫婦の実態のない相手に生活費を払うのは馬鹿馬鹿しい」と考えるようになり、自分から離婚を望むようになるケースもよくあります。
ただし、別居後もしょっちゅう相手と会って行動を共にしていると「夫婦関係が継続している」と認定される可能性があります。