両親間の争いや暴力から逃れられるなど、両親の離婚が子どもにとって救いとなる面もありますが、今までの家族や、環境(学校、友達、住み慣れた家や地域、慣れ親しんだ近所の人など)との別れや変化、生活習慣の変化など、生活の中で様々なものを失う体験ともなり得るため、子どもの人生においても、とても大きな出来事といえます。
どんなに幼い子どもでも、その子なりに考えながら生活しています。そのときには普通にふるまったり、乗り越えて元気に過ごしているように見えても、内心では深く傷ついていたり、何年たっても両親の離婚について考え悩んでいることがあるのです。
離婚は相当なエネルギーを使う出来事ですので、当事者であるお父さん、お母さんが自分のことに精一杯にならざるを得ない状況はある意味仕方のないことではありますが、大切なお子さんたちへの影響も考える必要があるのです。
今回は両親の離婚による子どもへの影響と、子どもに配慮した離婚方法について、山口の弁護士が解説します(なお、山口家庭裁判所作成の「お子さんに配慮した話合いに向けて」を参考にしています)
1.両親の離婚による子どもへの影響と対処方法
両親の離婚により子どもにどんな影響が出ることあるのか、またその対処方法についてのヒントを、子どもの年齢ごとにご紹介します。
1-1.新生児~1歳半
子どもへの影響
状況が理解できない乳幼児であっても、両親の離婚や親の変化に反応を示すことがあります。
たとえば子どもに以下のような行動や反応がみられるケースがあります。
- 親の感情、環境の変化に敏感に反応する
- 以前よりも激しく泣く
- ミルクを飲まなくなる
- 夜泣きが酷くなる
- むずかる
- 排せつが乱れる
- 親との安定した愛着形成が難しい
対処方法
ご自身(お父さん、お母さん)とお子さんの生活リズムを整え、環境への変化をできるだけ小さくすること、精神の安定を維持することが大切です。
お子さんが不安そうな様子を見せるときには、スキンシップ(添い寝や抱っこなど)をいつもより多めにとるのも良いでしょう。
子育てや離婚の問題を全て一人で抱え込むことはありません。周囲のサポートを受け、お父さんやお母さんが少しでも安心できることが第一です。必要に応じて、専門家や相談機関のサポートを受けることを検討しましょう。
1-2.1歳半から3歳程度
子どもへの影響
1歳半から3歳程度の子どもの場合、両親の別居や離婚による変化に気づき、以下のような反応を示すケースがあります。
- 赤ちゃん返りする
- できていたことができなくなる
- よく泣くようになる
- 親が離れると不安がる、しがみつく
- かんしゃくを起こす
- 熱を出す
- おねしょが増える、復活する
- 腹痛、食事量が減る
対処方法
お子さんの生活リズムや環境(家、幼稚園や保育園など)への変化をできるだけ小さくすることが大切です。環境の変化を伴う場合には、お子さんのお気に入りのおもちゃなどを一緒に持っていき、できる限り安心させてあげる工夫が必要です。
お子さんに対しては、温かい言葉がけをすることや、スキンシップをとることを意識しましょう。子どもが言葉を話せる年齢になっていたら、自分の欲求を言葉にするのをゆっくりと聞いてあげることで、気持ちが落ち着きやすくなります。
お子さんが泣いたり、激しいかんしゃくを起こしたりしてイライラしてしまうこともあるかもしれませんが、ご自身が感情的に怒らないように努力しましょう。感情的になって怒ったり手を出してしまいそうなときには、深呼吸をしたり、その場を離れたりする対処が必要です。また、必要に応じて専門家や相談機関を利用しましょう。
1-3.3歳から6歳程度
子どもへの影響
就学前の子どもの場合、片親と離れて暮らすことに悲しみや寂しさを感じます。反応・行動として、以下のようなものがみられます。
- できていたことができなくなる
- 楽しめていたこと(遊びなど)楽しめなくなる
- いつもよりぼーっとしている
- 眠れなくなる、声をあげるなどの睡眠中の変化が見られる
- 「良い子」として振舞おうとする
- 両親の仲をとりもとうとする
- 「離婚は自分のせい」と思い込み、自分を責める
対処方法
このくらいの年齢の子どもは、状況の変化を敏感に感じとってはいるものの、正確に理解することが難しく、自分なりに離婚や別居の理由を考えるうち、親の別居を自分のせいだと思ってしまうことがよくあります。「離婚はあなたのせいではない」ということを(必要に応じて何度も)言葉で伝えるなど、自責感を抱かないような配慮が必要です。
また、子どもが見捨てられたと感じないように、できるだけ両方の御が、お子さんとかかわる時間・お話する時間を確保し、愛しているということを伝えましょう。
お子さんが退行(できていたことができなくなる)などの反応を見せるときは、しっかり受け止めるようにし、専門家に相談することも検討しましょう。
1-4.小学校低学年
子どもへの影響
小学校の1~3年生くらいの子どもは、両親の離婚によって以下のような反応を示すことがあります。
- 両親の離婚を自分のせいであると感じ、自分を責める
- 勉強や運動など、すべてに対し積極的に取り組み頑張ろうとする
- しっかりしているように振る舞う
- 学校生活において、意欲が低下する
- 気分の変化が激しくなる
- 頭痛や腹痛など、体調が変化しやすくなる
対処方法
お子さんに両親のけんかを見せると不安を感じてしまうので、口論を子どもに見せないように注意しましょう。子どもをどちらかの味方につけようとするなど争いに巻き込むこともやめましょう。
また、子どもが自責感を抱かないように、離婚が子どものせいではないことを(必要に応じて何度も)話し聞かせましょう。
心身の状態が不安定になったり、学校生活に影響が出たりする場合もあるので、可能であれば、学校とも情報共有し見守っていただくこと、保健室などの落ち着ける空間を利用させてもらうことも検討しましょう。
1-5.小学校高学年
子どもへの影響
小学校4~6年生などの高学年になってくると、以下のような反応を示すことがあります。
- 不満や怒りの感情を持つ
- 両親の離婚を「恥ずかしい」と思う
- 親に対して反抗・軽蔑の態度を取り、怒りを表現する
- 一緒に暮らす親に結びつきを感じ、離れて暮らす親に拒否感や敵意を持つ
- 父母の板挟みになって双方の顔色をうかがう
対処方法
子どもの生活(学校生活や友人関係、趣味や習い事、)をできる限り維持しましょう。それらが事情により変化せざるをえないときには、きちんと前もって事情を説明しましょう。
離婚の際には相手に腹が立つこともありますが、お子さんの前で相手や離婚についての愚痴や悪口を言うこと、どちらかの味方につけようとするなど争いに巻き込むことは控えましょう。
子どもがどちらの両親からも愛されていることを実感できるよう、できる限り双方の親との交流を維持し、相手の親と子どもが交流することについて肯定的なメッセージを伝えましょう。
1-6.中学生以降
子どもへの影響
子どもが中学生、高校生になると離婚の意味を正確に理解できますし、精神的にも親から自立し、自分のこと、両親のことを分けて考えることができるようになってきますが、一方で、「自分がしっかりしないと」と過度に責任を背負おうとする子もいます。
具体的には以下のような反応を示すケースがよくあります。
- 悲しみ、怒りを感じ落ち込んだような様子になる
- 学業に集中できなくなるなどの学校生活での変化が見られる
- 親と距離を取り、友人付き合いが中心となる
- 親を支えようとする
- 親の価値観を否定し、反発する
- 自立を強調した行動をとる(非行に走る、早熟な行動を取る)
親子けんかをしたときに、子どもが「お父さんと暮らす」などと言って家を出ようとすることもあります。
それまで同居親が別居親との連絡を調整していたケースでも、子どもが自分で電話やメールなどで別居親と連絡をとる機会が増えてきます。
対処方法
子どもが反抗的な態度を取るときは、ぐっとこらえ感情的にならずに対応することが大切です。
子どもが非行に走ったり、早熟した行動をとったりするときには、すぐに子どもを否定するのではなく、しっかり話し合う時間を設けましょう。手に余るときには一人で抱え込まず、必要なサポートを受けましょう。
このくらいの年齢になると、子どもも随分しっかりしてきますし、積極的に親を支えようとする子どももいます。親が意識せずに子どもに頼ってしまうケースや、子どもの方から、住居や同居する親について積極的に意見を述べるケースも見られます。
しかし、どんなにしっかりした子でも、子どもは子どもであり、本当に親に頼られると負担を感じてしまいます。また、自分の意見が受け入れられて事が進んだとしても、そのことについて将来まで責任を感じてしまうことがあります。
大人のことは、大人である両親同士で責任をもって決めなくてはなりません。一人で抱えきれないときや、心配なことがあるときは、友人や知人、専門家に相談しましょう。
まとめ
子どもがいる夫婦が離婚するときには、子どもの発達段階に応じた心身への配慮が必要です。離婚前後で子どもの様子に変化がみられる場合には、親だけでなく周りの人に協力してもらいながら、子どもを支える環境を整えていくことが必要です。
お父さん、お母さん自身が大変なときには、一人で抱え込まずに、積極的にサポートや社会資源を利用しましょう。学校や行政の相談窓口、病院(小児科、精神科)、カウンセラーなどがその例です。
法律のことは、弁護士が専門です。離婚のことで悩まれたら、ご相談ください。
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