離婚協議書や公正証書はどのようにして作成するのか、山口の弁護士がご説明します。
1.離婚協議書・公正証書とは
●離婚協議書とは
離婚協議書とは、夫婦で話合いをして合意した離婚条件をとりまとめ、夫婦がそれぞれ署名押印した書面です。離婚条件に関する「契約書」と理解すると良いでしょう。
夫婦が離婚に合意したこと、財産分与の方法、慰謝料の有無や支払方法、親権者、養育費、年金分割などの事項が書かれています。
離婚協議書を作成すると、夫婦で取り決めた内容が明確化されるので、後に相手から「そんな約束はしていない」と言われて反故にされるおそれがなくなります。
また相手が支払いをしない場合には離婚協議書にもとづいて請求することが可能となります。
●公正証書とは
公正証書(離婚公正証書)は、離婚協議書を「公正証書」にしたものです。公正証書は、公証人が作成する公文書ですが、一般の契約書を公正証書化すると、非常に強い効力が認められます。
公証人が作成するので偽造や変造のリスクが低下しますし、原本が公証役場に保管されるので紛失のおそれもなくなります。また「強制執行認諾条項」をつけておくと、支払義務者が支払いを怠ったときに、裁判や調停なしに強制執行(差押え)できるので、効果的に権利を実現できます。
このように、協議離婚書や離婚公正証書は非常に重要な意味を持つので、離婚の際には是非とも作成しておきましょう。
2.離婚協議書の作成方法
まずは離婚協議書の作成方法をご紹介します。
離婚協議書を作成するときには、まずは夫婦が話合いをして、離婚条件を決める必要があります。決めるべき項目は、以下のとおりです。
- 親権者
- 養育費
- 財産分与
- 慰謝料
- 面会交流
- 年金分割
など
条件に合意ができたら、離婚協議書の文面を作成しましょう。
文章は、パソコンで作成してもかまいません。手書きにするときには、鉛筆やシャープペンシルだと後で書き換えることができてしまうので、消えないボールペンや油性ペンを使いましょう。
まずはタイトルとして「協議離婚合意書」「離婚合意書」などと書きます。
その下に、取り決めた離婚条件を1文ずつ記載していきます。契約書のように、「第1条 離婚、第2条 親権…」などというように書いていくと良いでしょう。
財産分与を行うときには、財産の特定を確実にする必要があります。
不動産ならば「全部事項証明書(不動産登記簿)」の表題部を引き写します。預貯金であれば、金融機関名や口座の種類、口座番号を間違えずに書き入れましょう。生命保険の場合には生命保険会社名と生命保険の種類、保険証券の番号によって特定します。
財産分与の対象資産が多くなる場合などには、別紙で財産目録を付けてもかまいません。
文面を起こしたら日付を入れて、夫婦2人が署名押印をします。署名押印がないと、契約書は発効しないので、後回しにしてはいけません。なお、利用する印鑑は認印でも有効ですが、後に「偽造」などと言われないためには実印を使っておくと良いでしょう。
このようにして協議離婚書ができたら、2通作成して夫婦がお互いに1通ずつ所持します。紛失すると再発行できないので、大切に保管しましょう。
3.離婚公正証書の作成方法
次に、離婚公正証書の作成方法をご説明します。
公正証書を作成したいときには、まずはお近くの公証役場に公正証書の作成を申し込む必要があります。
「離婚公正証書を作りたい」と伝えると、担当の公証人が決まり、どのような条件で離婚したいのかを聞かれます。
そこで、夫婦で取り決めておいた離婚条件を伝えます(注:公証役場では、公正証書は作成してくれますが、離婚条件を決める相談には乗ってくれないので、事前に自分たちで離婚条件を話し合って決めておく必要があります)。
協議離婚書を作成している場合には、提示するとスムーズです。
公証人に離婚公正証書の作成を申し込むと、公証人から「必要書類」を揃えるように言われます。
夫婦2人の戸籍謄本が必要となりますし、財産分与を行う場合には、各種の財産の資料が必要です。不動産を分与する場合、不動産の全部事項証明書や固定資産評価証明書が必要になるので、取得しておきましょう。必要な資料はケースによって異なるので、公証人に確認する必要があります。
資料が揃わないと公正証書を作成してもらえないので、早めに揃えましょう。
必要書類を揃えたら、公証人の予定の空いている日に夫婦で公証役場に行く必要があります。当日は身分証明書と印鑑を持参しましょう。
公証役場では、公証人ができあがった離婚公正証書を読み上げてくれるので、夫婦でその内容を確かめます。
間違いがなければ、夫婦それぞれが公正証書に署名捺印します。そして公証人も署名押印すれば、離婚公正証書ができあがります。
公証役場には原本が保管され、夫婦には写しの書面である正本や謄本が交付されます。後に強制執行するときには正本が必要となりますので、受けとったらなくさないように大切に保管しましょう。
また、公正証書を作成する際には手数料がかかります。財産分与や慰謝料の金額にもよりますが、2~3万円程度となる事案が多いでしょう。