たとえば子供の親権者となるケースでは、離婚後どのような行政給付を受けられる可能性があるのか知っておく必要がありますし、子どもと自分の生計をまかなえるだけの収入を得られるのか計算して、離婚後の生活についての計画を立てておくべきです。
今回は離婚の際に考えておきたい「離婚後の生活」について、必要事項をご説明します。
1.離婚後にもらえる可能性のある行政給付
離婚するときには、必ず離婚後の生活を見越して計画をしておかなければなりません。特に婚姻中に専業主婦だった方の場合、離婚後には夫から生活費を払ってもらえなくなるので、たちまち生活に困ってしまう可能性があります。
離婚時、特に子どもの親権者となった場合、行政からさまざまな給付を受けられる可能性があり、具体的には、以下のようなものが考えられます。
(1)児童扶養手当
(2)児童手当
(3)特別児童扶養手当、障害児童福祉手当
(4)生活保護
(5)就学援助
(6)就労援助
(7)ひとり親家庭に対する医療費補助制度
(8)乳幼児医療費助成制度
(9)交通費の助成
(10)税金、下水道料金の軽減
それぞれについて簡単に説明をします。
児童扶養手当は、地方自治体からひとり親家庭に対して給付される補助金で、子どもが18歳になる月まで給付金を受け取れます。
子どもの人数によって金額が異なり、1人なら42500円程度、2人なら52540円程度、以下子どもが1人増えるごとに6020円加算されます(平成30年4月現在)。
ただし、児童扶養手当には所得制限があるので、一定以上の所得があると支給されません。
離婚後受給を開始するためには、市町村役場へと申請をする必要があります。
児童手当は、子どもが生まれてから中学校を卒業するまでの間、自治体から支給される給付金です。金額は、以下の通りです。
- 0歳から3歳未満の場合、月額1万5000円
- 3歳から小学校終了までの場合、子どもが2人までは1人あたり月額1万円、3人目以降は1万5000円
- 中学生の場合には、月額1万円
児童手当はひとり親家庭でなくても受け取ることができるので、離婚前は世帯主である夫が受け取っているケースが多いです。その場合、離婚によって妻が親権者となると受給権者を妻へ変更しなければなりません。また所得制限があるので、離婚前は制限されていても離婚後は受給可能となるケースがあります。離婚後、市町村役場で申請や変更の手続きを行いましょう。
子どもが身体や精神に障害を負っている場合には、通常の児童扶養手当とは異なる特別な手当を受け取ることができる可能性があります。
特別児童扶養手当は、精神や身体に障害がある20歳未満の子どもがいる家庭に給付される手当です。障害児童福祉手当は、子どもが特別障害児の場合に支給される手当です。
子どもに障害がある場合には、市区町村役場に行って申請手続きを行いましょう。
小さい子どもを抱えており、病気で働けないなどの事情があって生活することが難しければ、生活保護を受けることも可能です。
生活保護の申請に通ると、国が定める「最低生活費」が支給され、子どもの人数が増えると受給金額も上がります。
受給申請するときには、居住地の福祉事務所に行って、生活保護担当のケースワーカーに相談をして手続きを進めましょう。
就学援助とは、生活保護基準の世帯やそれに準じる世帯収入の低い家庭に対して行われる援助です。小中学生の子どもの学用品や通学用品、修学旅行費、給食費などの一部が支給されます。
母子家庭の母親が就労するための援助金制度もあります。
まず、児童扶養手当の支給基準を満たすひとり親家庭の場合、就労のための教育訓練を受講する費用の20%を上限として「母子家庭自立支援教育訓練給付金」を受け取れる可能性があります。
また、介護福祉士などの資格を取得したい場合には、「母子家庭高等技能訓練促進費等給付金」という援助を受けられます。
これらの給付金を申請する際には、自治体窓口へ相談に行きましょう。
ひとり親家庭の場合、病院で治療を受けたときの費用を助成してもらうことができます。
子どもの医療費だけではなく、父親や母親などの養育者本人が医療機関を受診する場合にも補助が適用されます。所得制限があるので、一定以上の所得があると適用されません。
制度を利用するためには、自治体へ申請しましょう。
子どもが乳幼児の場合には、乳幼児の医療費の助成を受けられます。ひとり親家庭かどうかとは無関係に適用されますが、所得制限があります。離婚前は利用できていなかったケースでも、離婚後に適用される可能性があります。
児童扶養手当を受け取っているひとり親や生活保護世帯の方は、JRの通勤定期券を3割引で購入することができます。
また、たとえば東京都では都営交通の無料パス(乗車券)が交付されます。これにより、都電、都バス、都営地下鉄を無料で利用できます。居住地域によってこうしたサービスがあるので、調べて利用しましょう。
所得が一定以下のひとり親家庭の場合、所得税や住民税が軽減されます。また、児童扶養手当や生活保護を受給している世帯の場合には、下水道料金が免除あるいは、減額される制度があるので、自治体に相談してみましょう。粗大ゴミの処理手数料を減免してもらえる自治体もあります。
2.離婚後の住まいについて
離婚するときには、離婚後の居住場所についても考えておかなければなりません。
実家に戻るのか、子どもと一緒に賃貸住宅を借りるのか、あるいは今まで家族で居住していた家に住み続けるのかなど、決める必要があります。
賃貸を借りるなら周辺環境なども調査して、子どもの養育に適した住居を探す必要があります。離婚時にすぐに引っ越しできるよう、離婚前から探しておきましょう。敷金や引っ越し費用、礼金などがかかる場合には、離婚時財産分与や慰謝料などの交渉の際、そういったお金のことも頭に入れて臨む必要があります。
離婚後も今までの家に住むならば、相手から財産分与を受けるための話し合いを進める必要があります。住宅ローン支払い中の場合には、住宅ローンの借り換えを検討すべきケースもありますし、借り換えができない場合には、誰が住宅ローンを負担すべきかも問題になります。
離婚後の住居の問題の解決方法は複雑になりやすいので、適切な方法が分からない場合には、弁護士までお気軽にご相談下さい。
3.離婚後の仕事
離婚後、できれば生活保護などではなく、自分で働いて自力で子供を育てていきたいものです。そのため、離婚前から仕事探しもしておくと良いでしょう。
また、特にスキルがない方の場合には、上記で紹介した就労援助を受けて就労訓練を受けたり資格を取得したりして、就職につなげるのも1つの方法です。
ひとり親家庭になると、保育園にも優先的に入りやすくなるので、なるべく自分で働いて、生計を立てられるようにするのが理想です。
4.養育費について
離婚時に子どもを引き取るのであれば、相手からの養育費の支払いも受けられます。養育費と自分で働いて得たお金と上記で紹介したような行政給付を合わせて、離婚後の生活を維持しましょう。