モラハラとはどのような行為であり、モラハラで離婚できるのはどのようなケースなのか、まずは押さえておきましょう。
また、モラハラ被害に遭った場合には相手に対して慰謝料請求できる可能性もあります。
今回は、離婚原因としての「モラハラ」について、山口の弁護士が詳しく説明いたします。
1.モラハラとは
モラハラとは、モラルハラスメントの略です。
直訳すると倫理や道徳の嫌がらせということですが、具体的には、暴言を吐いたり相手を不当に貶めたりする行為がモラハラとされます。
DVが身体的暴力であるのに対し、モラハラは精神的暴力であると説明されるケースもあります。
典型的なモラハラ行為は以下のようなものです。
●暴言を吐く
日常的に「バカ」など暴言を吐きます。
「お前は俺がいないと何もできない」「最低な人間だ」などと言って配偶者を貶めるパターンも多いです。
このことで、モラハラ被害者はだんだん本当に自分に価値がないような気持ちになってしまいます。
●行動を束縛する、監視する
夫(妻)が配偶者の行動を異常に束縛するケースなどです。
たとえば1日のスケジュールを書かせてその通りに行動させたり、昼間に自宅に電話をかけて、出なかったら「どこに行っていたんだ」と問い詰めたりするパターンがあります。
●無視し続ける
相手が話しかけたり挨拶したりしても、無視します。
●何を言ってもばかにする、嘲笑する
相手が何かしら意見を言っても馬鹿にして「だからお前はだめなんだ」「レベルが低い」などと嘲笑します。
●細かくミスを指摘する
相手がゴミを出し忘れたり買い物で必要な物を買い忘れたりすると、ねちっこくいつまでも責め続けたりします。
●実家との付き合いをさせない
実家の親族とつきあうことを許さないモラハラ配偶者も多いです。
実家の親の葬式に行くなと言ったり、交通費を出さないと言ったりする人もいます。
2.モラハラが離婚原因となる場合、ならない場合
モラハラが離婚原因となるには、モラハラが「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当する必要があります。
婚姻関係を継続し難い重大な事由とは、不貞や悪意の遺棄(生活費の不払いや家出など)、回復しがたい精神病や3年以上の生死不明と同程度に重大な事由です。
モラハラの程度が相当酷く、モラハラが続いている期間も長くなっている場合などには離婚原因と認められやすいです。
たとえば、日常的に夫(妻)が配偶者を束縛し、配偶者を罵倒したり貶めたりし続けた結果うつ病になってしまった場合や、配偶者の実家や友人との付き合いを一切禁止して、配偶者が人間らしい生活を送りにくくなっている場合などには離婚が認められるでしょう。
これに対し、モラハラと言っても程度が軽く、たまに悪口を言ったり馬鹿にしたりする程度では、離婚は認められないでしょう。
3.協議離婚、調停離婚ならば離婚原因が不要
モラハラのケースでも、協議離婚や調停離婚をするのであれば離婚原因は不要です。
夫婦が話し合いによって離婚に合意する場合、法律上の離婚原因がなくても離婚できるからです。
4.モラハラの慰謝料
モラハラを理由として離婚するときには、モラハラ加害者に対して慰謝料を請求できます。
モラハラは、夫婦の婚姻関係を破綻させる違法行為であり、不法行為を構成するからです。
慰謝料の金額は、ケースにもよりますが、だいたい数十万円~200万円程度です。
5.モラハラの証拠
モラハラを理由として離婚を進めるためには、事前にモラハラ被害の証拠を集めておくことが必要です。
モラハラ加害者に対して離婚を求めても受け入れないケースが多いですし、まして慰謝料請求をしても拒絶されることがほとんどです。
離婚や慰謝料の支払いを拒絶されたときには、離婚調停や訴訟をする必要がありますが、最終的に訴訟によって離婚や慰謝料を認めてもらうためには、モラハラ被害の証拠が必要となります。
モラハラの証拠となるのは、以下のようなものです。
- 相手からの暴言を録音した記録
- 相手から渡されたメモ、命令書
- 相手から送られてきたメール
- モラハラ被害を受けていたことを記した日記やメモ
有効な証拠の集め方が分からない場合、弁護士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。
6.モラハラ被害に遭った時に離婚する方法
モラハラ被害に遭って離婚を希望するなら、以下のような手順で進めていきましょう。
まずは相手に対して直接離婚の希望を伝えて話し合う方法があります。
夫婦の双方が離婚に合意したら、協議離婚の方法で離婚できます。
ただ、モラハラ加害者にはモラハラ行為をしているという自覚がないことが多く、離婚を求めても受け入れないことが多いです。
まして慰謝料を請求しても支払に応じる可能性は低いでしょう。
「子供の親権を渡さない」と言われて子供を盾に取られるケースもあります。
このような場合、離婚を進めるには離婚調停をする必要があります。
調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入って話を進めてくれるので、相手と直接顔を合わせて話し合う必要がありません。
モラハラが行われている場合、被害者は加害者に対し、まともに意見を言えなくなっているケースが多いので、調停は非常に有効です。
場合によっては協議離婚のステップをとばして始めから調停すべき事例もあります。
調停委員による調整によって、離婚と離婚条件に合意ができたら、調停離婚できます。
調停でも合意ができなかった場合には、離婚訴訟によって離婚を進めるしかありません。
このときには、相手のモラハラを証明するための証拠が必要です。
事前に集めておいた証拠を提出して、裁判所にモラハラの事実を認定してもらいましょう。
程度の酷いモラハラがあったと証明できれば、判決によって離婚を認めてもらえますし、慰謝料支払い命令も出してもらえます。
「もしかして、これはモラハラかも?」と心当たりがおありなら、一度山口の弁護士までご相談ください。